的を得てます 2

▲政権が突然崩壊する可能性も…

国民の多くは、これが単なるパフォーマンスにすぎないこと、そしてこの国では、政治家のポストは、すでに世襲制の「家業」でしかなく、格別の志もなく親から受け継いだ商売に命を張る者などいるはずがないことを、とうの昔に見破っているに違いない。

しかもそれに加えて、国民の多くには「誰がやっても変わりない」というあきらめもある。

実はこのあきらめには根拠がある。本書で解説しているいわゆる「中位投票者定理」のアイデアの簡単な応用で、二大政党制傾向が強まるにつれて政党間の違いは少なくなってくる事を示すことができる。しかも、五十五年体制崩壊以来、日本では、主要政党間の主張の格差はそれでなくとも縮まる傾向にある。

したがって、国民は、たとえ民主党政権が成立しても、世の中は大して変わらないだろうということをわかっているだろうし、ましてや自民党内の首相の交代は何の変化も生み出さないことを知っているに違いない。

こう考えると、小泉政権の高い支持率の秘密も見えてくる。つまり、総理大臣が小泉氏でなければならない理由はない代わりに、小泉氏であってならない理由もないのだ。だから、国民が世論調査などで不支持を表明して、あえて小泉氏を総理大臣の座から引きずり下ろしたいと願う積極的理由は存在しないことになる。

そういう意味で少なくとも現状は均衡状態なのである。したがって、そう考えれば小泉政権は長期政権になる可能性がある。

ただし、この均衡は実に不安定な均衡である。つまり、小泉政権には、わずかな外生的ショックがあっただけで崩壊しかねない不安定さがある。

特に今後二大政党制化がますます進んで、政党間の政策が似通ってくれば、小泉氏の代わりになる人や政党はいくらでもいることになるから、ちょっとした失政や取るに足らないスキャンダルなどが政権の命取りになる可能性がある。

そういう意味では、思いもよらなかった時期に、予想だにしなかった理由で、突如政権が崩壊する(あるいは政権を投げだす)というような可能性も否定できない。

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28日発売